ネクタイはダイソーが強い

2018年1月18日に放送されたカンブリア宮殿。内容は100円ショップの王者、ダイソーの特集でした。

ダイソーは国内3,150店、海外でも26の国と地域に1,900店舗を展開しており、2017年3月期の売上高は4,200億円。誰がどうみても巨大企業ですね(ちなみに市場シェア第2位であるセリアの2017年3月期 売上高は1,453億円)。
f:id:century21ikiru:20180212233840p:image
(出所:ダイソーHP)
ダイソーの特徴としてはやはり「薄利多売ビジネス」。アイテム数は70,000を数え、新商品は毎月700以上開発されています。ダイソーに行けばとりあえず全部揃う、そう思われている方も多いことでしょう。
f:id:century21ikiru:20180212235022j:image(出所:ダイソーHP)
f:id:century21ikiru:20180212235011j:image(出所:ダイソーHP)
 さて、これほど多数の商品を取り扱っているダイソーで私が買うものといえば、文房具や食器などがメイン。世間の人達もそうだろうと思っていましたが、番組を見て衝撃的な事実を知りました。なんとネクタイが売れまくっているというのです。しかも青山やAOKIといった専門店よりも売れているとのこと。ネクタイ販売数量No.1であり、年間販売数量約200万本。実に3秒に1本売れている計算になります(国内売上本数の約2割)。
※「売上」ではなく「数量」という点は注意してください。
f:id:century21ikiru:20180212235907j:image(出所:ダイソーHP)
ネクタイが売れまくっているということは分かりましたが、なぜこれほど売れているのでしょうか。
 
■低価格ネクタイ市場はブルーオーシャン
皆さんが数百円のネクタイと聞いて思い浮かべるものは何でしょうか。100円ショップのネクタイを思い浮かべた人が多いのではないでしょうか。今まで深く考えたことはなかったのですが、実は数百円のネクタイを販売している企業って少ないんですよね。青山やAOKIといった専門店では、安いものでも2,000円はします。このように、低価格のネクタイを販売している企業が少ないため、市場を独占することができ、売上数量がNo.1になったと考えられます。
ただ、この戦略を応用する際に注意しておきたい点は、低価格に展開がされていないアイテムであれば何でも良いという訳ではないというところです。ネクタイの場合は演劇で使用するといった、品質よりも価格を重視をする層が一定数いたため、上手くいったのでしょう。100円のコートはどこも売ってないからといって、100円で販売したとしても恐らく売れないですよね。
 
■「低価格なら100円ショップ」という高い認知率
先程、「数百円のネクタイと聞いて思い浮かべるものはなんですか」という質問をしました。この質問によって得られる認知率はマーケティング用語で「Unaided Awarenes」といいます。そして、この質問に対して、真っ先に名前が挙がることが企業にとって重要になります。なぜなら、真っ先に候補に挙がるということは、それだけ購入される割合が高まるからです。今回の低価格のネクタイの場合、100円ショップのネクタイの想起率が高いということになります。しかし、低価格の食器の場合を考えてみると、ニトリといった競合他社の方が想起率が高い可能性があり、100円ショップにとっては厳しいカテゴリーになりそうです。
 
■今後ダイソーがとるべき戦略
以上の点を考慮した場合、ダイソーがとるべき戦略は何なのでしょうか。私はUnaided Awarenesが圧倒的に高いブランドがあるカテゴリーは避け、比較的分散しているカテゴリーに注力するのが良いと思っています。例えば、花王の「クリアクリーン」、ライオンの「クリニカ」といった、Unaided Awarenesが高いであろうブランドがひしめいている歯磨き粉の場合、その間に100円ショップが割って入り、売上を上げることは容易ではありません。一方で、スポンジといったカテゴリーであれば、資本を投入し、Unaided Awarenesを高めることが可能であると思います。プライベート・ブランドが99%を占めるダイソーであれば、そのような商品を開発することはできるでしょう。
 
【参考文献】

 

確率思考の戦略論  USJでも実証された数学マーケティングの力

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力